このたび河路由佳氏の著書『土岐善麿の百首』(ふらんす堂)を読む機会を頂いた。土岐善麿は啄木晩年の友人であるが、啄木没後も残された家族を支え、その著作の出版に奔走した啄木の唯一人の友であったことはあまり知られて無い。
もし、土岐善麿がいなかったなら啄木の名を今日に残ることも無かったかも知れないと私は思うが此処では河路氏の歌人として読んだ土岐善麿の歌の解釈とその鑑賞に感動したことを伝えておきたい。
本書を読みながら私は、この歌は啄木の、あの歌が本歌になっているのか?、それとも善麿の歌が啄木の、あの歌の本歌なのか?と幾たびも思った。
啄木と同年代であった善麿は95才近くまで歌人として生きたこともあって残された歌も多く、本書で取り上げられた歌の作歌時期も長い。
が、私が目にとめた多くの歌は啄木と同時期に詠まれた作品であった。ゆえに啄木と善麿は同時期に同じような歌を詠み、同じようなものを見ていたように思えた。
下に3首の歌を写真版で紹介させて頂いたのが、可能なら本書を手に取ってご覧になって頂きたい。