寺山修司は石川啄木の影響を強く受けている文人の一人であることは広く知られている。
ゆえに寺山修司初期短歌には啄木短歌を踏襲したような作品もあり、意図的に寺山は啄木短歌『一握の砂』その続編まで作ってしまったこともある。もちろん、寺山流のパロディー版だが、短歌の他に石川啄木という人間にもかなり興味を持っており「啄木小伝」まで書いている。
拙著『石川啄木文献書誌集大成』(約2万2百点余の啄木文献を紹介:武蔵野書房:1999年12月発行)の索引をみると寺山が啄木について書いた文献が18点ある。さらに『続・石川啄木文献書誌集大成』(補遺編を含め約1万3千点余の啄木文献を紹介:桜出版:2018年12月発行)には38点ある。
この数字は寺山が如何に啄木に対して関心をもっていたかを伝えるものであるかと思う。
さて、短歌結社「りとむ」(編集・発行・三枝昻之)は、このたび創刊30周年を記念して通巻181号を本年7月1日に「資料編 寺山修司短歌語彙」(全402頁)を発行した。
この偉業は寺山修司研究者のみならず、歌人や作家研究者にとっては勿論であるが、私たち研究面では部外者の読者にとっても有難いものである。
また、啄木短歌の影響を強く受けた作家の一人である寺山修司をより深く理解する上に於いて今後は貴重な一書として残す意味に於いても本書は結社誌ということで一般の書店にて購入できる本では無いが、国会図書館をはじめ、各都道府県立の図書館等には、ぜひ、収録、保存を願っている。