今回は啄木と直接の関係は無いのだが、ここに紹介して置きたいと思ったのは編著者が啄木研究(特に節子側からの啄木観察は鋭くて温かい眼差しを感じさせる人)の第一人者であることと、もちろん啄木とは無関係に選ばれた芝木好子の作品の中に私は啄木の妻節子の姿をを見ていたので、その点から紹介したくなった次第です。
昨日の東京新聞(2022年8月26日(土)朝刊〈平田俊子さんの3冊の本棚〉に山下多恵子さんの編著『芝木好子アンソロジー《2》美しい記憶』が紹介されていた。
《1》「恋する昭和」(2021年刊)は以前に紹介したが今回の《2》は未だ紹介してなかったので、平田氏に紹介を読んで感動した作品が私と重なる作品があって嬉しくなった。
妻子を捨てフランスに渡った亡き夫を訪ねる妻の話しの「ゴッホの墓」、そして2人の男性の間で揺れる女性の話「舞扇」の2点に私はなぜか啄木の妻節子の姿を見つつ読んでいる自分に苦笑した。
実際の小説にはしっかりと自立して生きようとする切ない昭和の女性が描かれているのだが、啄木の妻節子も捨てられながら啄木を追いかけ、ついは死に至った人である。
しかし啄木の才能を最後まで誰よりも信じたのは節子であったと思う。
機会があったら、ぜひ、この山下さんの編著で芝木作品を読んで見てください。