早坂暁著『この世の景色』(みずき書林:2019年10月)の中に収められた10ページほどの啄木を含む、平賀源内、小林一茶、三島由紀夫、太宰治、などの「田舎天才」ぶりを取り上げているが、私の手元の『石啄木文献書誌目録』(正編)では、元々の文章は平成3年11月1日発行の雑誌「ミセス」(文化社)に載った文章で、これを平成4年5月に文化社から発行された早坂暁著『夢の景色』に収録されたもので、公刊されるのは3度目ながら、佳い啄木エッセイなので紹介するが、本書がたった1年で再版されるほど売れているのは、今のコロナ禍の中で読みたい1冊のエッセイ集だからであろう。
最初に紹介したように『夢の景色』というエッセイ集からも7編ほど再録されているが、35編の文章の中の7編であり、早坂氏のドラマや文章を愛した人には「あの感動を今一度」味わえるように珠玉の文章が集められている。
啄木については1点だが、ほかのエッセイにも目を通してみたら「早坂暁」というシナリオ作家の真髄に触れられるものと思う。
特に故人となった俳優の渥美清との交流を綴った5編の文章からは、もうひとりの「寅さん」の顏が見えてきて哀しくも嬉しい文章だ。