湘南啄木文庫ブログ

このブログは佐藤勝が個人的に収集した歌人・石川啄木に関する「よろず」情報を紹介いたします。また、私の雑多な日常的な話題や趣味の世界(落語や演劇鑑賞、読書体験)なども記してゆきますが、いずれの部門の同好の方々からのご協力なども頂くことが出来れば有難いです。なお、石川啄木に関する文献を主にした「湘南啄木文庫」のホームページ(http://www.ne.jp/asahi/shonan/takuboku/)の方も覗いて頂ければ嬉しいです。

北嶋藤郷著『日本におけるドナルド・キーン書誌 ドナルド・キーンをめぐる人びと』を読む!

日本文学研究者のアメリカ人、ドナルド・キーンの名は石川啄木と並んで、たびたび紹介されることがある。

それはドナルド・キーン氏が啄木(特に「啄木日記」)に深い関心を示し続けたからであるが、93歳で亡くなる直前に氏は『石川啄木』(新潮社)という長編の評伝を書いたからであり、この文章は雑誌「新潮」(2016年2月号)に掲載されたものを刊行したのであるが、雑誌掲載の直後に国際啄木学会会員のY氏が、その評伝には50箇所を超える誤りのあることを雑誌の編集部宛てに送っていたことも私はY氏から直接伺った。が、残念ながら訂正された箇所は僅かであったと云う。

しかし、M氏は英語圏に於いて石川啄木の評伝が初めて刊行されたことに大きな意義があると語ったことも含めて同書のことをAmazonのカスタマレビューに「湘南の啄木」がその経緯を詳細に紹介している。

また、単行本が発行された翌年の国際啄木学会発行「研究年報」に前述のY氏が書評を書いている。

新潮社の単行本発行間もなくして英語版がニューヨークから発行された。現在、新潮文庫にも入っている。

 

さて、そのドナルド・キーン氏の日本における書誌を調べて一冊の豪華本にまとめた人がいる。

私はその本を約2年の月日をかけて本日、ようやく読了した。北嶋藤郷著『日本における ドナルド・キーン書誌 ードナルド
・キーンをめぐる人々ー』(レッドペアプレス/A5判/全236頁/2021年2月)

表題と目次を見てわかるように本書はドナルド・キーン氏に関する文献を徹頭徹尾蒐集し、その書誌の紹介に止まらず、簡潔明瞭な短文にて文献の内容も紹介し、文献によっては全文を縮小版にして載せてもいる。
また、例えばドナルド・キーン三島由紀夫と出会う機会となった経緯や其の後の二人の交流まで述べながら、発表された文献の詳細な書誌を記すというものに、私はドナルド・キーンの書誌というよりも評伝のような感覚で細かい文字を2年間追い続けた。

私自身が2冊の『石川啄木文献書誌集大成』(正・続)を編み、2冊合わせて三万二千余点の文献を紹介したことを思いながら、本書は私の書誌とは異なることは承知しながらも、その魅力にハマってしまったことも事実だった。

北嶋氏にこの大著を成させたものは何か?、という好奇心もあるが、この仕事の途中で折れなかった著者の強靭な精神力にも敬服するばかりであり、敬服は感動となって読了した。

顧みるに本書を開きながら幾たび文献にあげられた書籍などを自分の書棚にもあったのでは?と思い、今度は見つけた本を読んでしまい、本書は途中になる。
そのように楽しませてくれることが嬉しくて2年を超える月日を共有してきたものなので、この嬉しさを綴りたくなったものだが久しぶりに、嬉しい読後感を味わっている。

次は大室精一編著『啄木と節子  まるわかり年譜』(桜出版)と太田登著『啄木  我を愛する歌ー発想と表現ー』(八木書店)の2冊で楽しませて頂くことになっている。

ドナルド・キーン書誌...』の表紙

ドナルド・キーン書誌』の目次(1)

ドナルド・キーン書誌』の目次(2)