【新刊 啄木図書の紹介】
石川啄木全集の最新版は残念ながら昭和57年を前後にして発行された筑摩書房版(全8巻)を最終として何処からも、この集に収めた以上の全集や選集も出て無い。
筑摩書房版は岩城之徳氏と小田切秀雄氏の編著となっているが私の知る限り、裏の実務者は全巻にわたって藤澤全氏であったが、このことは岩城氏がたった二行に藤澤氏に負うところ多大な云々の言葉を書き留めいるのみである。
この話しを私は藤澤氏から聞いたのでは無い。元筑摩書房の編集者や岩城之徳氏の側近であった(所謂、教え子)人たちから早くから聞いていた。
その藤澤氏にはもちろん『啄木哀果とその時代』など啄木研究に欠くことの出来ない名著もある。
が、今回、あらためて発行された本書は、これまで単行本に収められなかった著者の啄木観や啄木の生きた明治という時代と共にあった国際的な文学史から見た啄木は、何処に位置づけられる文学者であるか等、あらためて書き下ろされた論稿も含めて藤澤氏の専門である比較文学者としての目を通して見た「国際的文学者」としての啄木を再考するものであり、貴重な啄木論である。
書誌情報は以下の通り。
藤澤全(ふじさわ・まとし)著『異邦と石川啄木〜ケース・サタディー』(春陽堂書店/2400円➕税/193頁/四六判/2022年2月28日発行)