先ず、このたび刊行された碓田のぼる著『石川啄木と労働者』(本の泉社:2,023年5月)は、95歳でなお、啄木の魅力と其の歌の持つ力を伝えようとされている著者、碓田のぼる先生の生き方に私は感動する。
世に啄木研究書(論)と云う書は星の数ほどあると言っても過言では無い。
中には自称研究書なる無意味な書も時々交じっているが、本ブログにおいては、それらの文献(書籍)は紹介に値せずとして取り上げない。
此処に紹介する書はすべて新刊書であるが、今後も多くの啄木関係図書の中から良書を見極めて伝えて行くことを心がけている。
それが「湘南の啄木」が推薦する良い啄木研究書図書であることを自負している。
もちろん本書『石川啄木と労働者』は第一級の良書である。
著者の碓田のぼる先生は啄木研究の第一人者であり、その研究方針は常に「働く者の立場から」としての視線が一貫しており、其処に私は感動する。
碓田先生は本年95歳になられる今も、啄木が労働者の応援者であることに賛辞とエールを送り続けている姿は奇跡でもなく、ドラマでもなく、真実なのである。
17才で終戦を迎えた碓田少年が、戦後の混乱期の社会で啄木と出会うまでのことは『ふたりの啄木~青春のめぐり合い-~』(労働旬報社/1,985・5)に詳しく、感動的に書かれているので、機会があれば此方もご一読をお薦めしたい。
これらの著作を踏まえて私は何時も碓田先生の著書に感動とともに触れている。
本書でも働く人の立場に立って啄木が如何に生きたか、啄木の歌が如何に多くの働く人々の励みとなり、慰めとなったか。
その歌と人生を重ねて解釈し、社会の矛盾と労働者は如何にして共存すべき道があるかを探り出す道標を示そうとしておられる1冊の良書なのである。
本年95歳になられる著者に心よりお礼を申し上げたい。