先日、Facebookの友達から京都新聞の小さなコラム欄に歌人の石川啄木と詩人の大岡信の話しがちょっと載ってますよ、とお知らせを頂いて記事の切り抜き(下記の写真版)を送信して頂きました。
これは声楽家の宮本益光氏が東京芸大在学中に大岡信教授から受けた講義の中で大岡氏が「啄木愛」という内容のことを話されたことを記憶しておられて書かれたものであるが、私はこの文章を読みながら、ああ、大岡氏なら啄木を熱く語ったであろう思った。
その根拠は大岡信の詩と石川啄木の歌には、どこかで通じあうような親しみがある。そして大岡信は啄木についてたくさんの文章を書いているからである。
2冊の拙著『石川啄木文献書誌集大成』(武蔵野書房:1999年11月)と『続・石川啄木文献書誌集大成』(桜出版:2018年12月)の索引を覗いてみたら、大岡信が最初に啄木について書いたのは昭和53年(1978年)3月に筑摩書房から発行された『石川啄木全集』の案内のパンフレットに載せた「天才の本質的な活力」という文章であることがわかった。
このほかに前著に収録された文献数は6点ある。また、拙著【続編】の中には22点の啄木文献を執筆されていることが確認できる。
その最終の「啄木愛」の文章は大岡氏が長年、朝日新聞に連載して好評であった「折々のうた」の平成18年(2006年)8月25日号に掲載された「石川啄木(まくら辺に・・・)」という短文である。
大岡氏が当時、大学生であった宮本氏に残した「啄木愛」の印象は、本物であり、それを記憶して声楽の大家となった宮本氏もまた、天才的な人なのであろうと私の思いは広がっている。