湘南啄木文庫ブログ

このブログは佐藤勝が個人的に収集した歌人・石川啄木に関する「よろず」情報を紹介いたします。また、私の雑多な日常的な話題や趣味の世界(落語や演劇鑑賞、読書体験)なども記してゆきますが、いずれの部門の同好の方々からのご協力なども頂くことが出来れば有難いです。なお、石川啄木に関する文献を主にした「湘南啄木文庫」のホームページ(http://www.ne.jp/asahi/shonan/takuboku/)の方も覗いて頂ければ嬉しいです。

小説:『わが夫 啄木』(鳥越碧著:文藝春秋:2018年12月14日)が発行された! 

 

f:id:s-takuboku:20181225231718j:plain

鳥越碧著『わが夫 啄木』(文藝春秋


小説を書くという作業は70歳を超えた身には、体力との勝負もあって大変な作業であり、さらに話題になる小説を書くというと、なおのことであろうが、鳥越碧氏は見事にそれらの障碍を超えてしまったようだ。

 このたび発行された「わが夫(つま)啄木」を石川啄木の妻・節子の回想という形から入って生前の啄木との暮らしの中を語り、夫婦という二人の関係では、嫁姑の確執に自らも藻掻く姿を見せるが、そこには明治という時代の家族制度があったことまで感動的に書いている。

 本書は「評伝」ではなく、小説なので作者が自由に筆を走らせたところも多くあって、それが実写化された映像を見ているように見えて来るのは、この作家の筆力という他はない。巻末に記された参考文献を見て感服した。新旧の啄木文献から要所を抑えた多くの文献が選ばれている。その多くは学術的にも認められた人たちの研究論である。

 そして「あとがき」には、読者を泣かせることも書き込んである。啄木の好きな人には、この正月休みにぜひ、一読をおすすめしたい。この小説を読んだあとでさらに、参考文献の中から何点かの啄木関係の本を読んでみたいと思った人には、山下多恵子著『啄木と郁雨 友の恋歌 矢ぐるまの花』(未知谷)や澤地久枝著『石川節子 愛の永遠を信じたく候』(講談社)などをおすすめしたい。やさしくて、しっかりした内容の啄木伝なら池田功著『石川啄木入門』(桜出版)が最適だと思う。