先ず、第一の感動は通し稽古を見た時の想像を遥かに超える舞台になっていたことでした。
そして、最初の驚きは、シンプルな舞台装置が、役者さんたちの動きを軽やかに、そして、活き活きと見せる効果を発揮していることでした。
物語は、明治の詩人で若くして亡くなった石川啄木の終演の地に、啄木の歌碑を建立しようと立ち上がった啄木ファンの女子会メンバーと、地元の住民たちが力を合わせて、当初は渋っていた役所の担当者や上層部をも巻き込んで、全国的にも珍しい啄木の直筆原稿用紙を拡大した陶器を啄木の故郷から取り寄せた「姫神小桜石」という自然石を使った碑に嵌めこむという歌碑、これもまた、全国的に珍しい手法で造られた歌碑で、建立されるまでのエピソードを書いたものだが、どちらかと言えば地味な内容だ。
しかし心の温まる話しであり、これを150分の1幕舞台にしたことに、私は心の底から、ゆっくりとだったが感動する自分に戸惑ってしまった。
悪役が1人も登場しない舞台は、話しのつなぎも難しいかと思うが、脚本を読み込んだ選出家(ささおか みゆき)の裁量にも拍手をしたい、という思いが帰宅した後までも続いたことも記して置く。
さらに、音響の効果も素晴らしい。開幕の軽快で軽やかで強烈にビートの効いた音響が突然止むと(病人らしき)主人公の低めの台詞が不思議と耳に入り易いのだということを実感した。
また、照明の使い方が抜群に効果的だったことも記して置きたい。
小劇場の小さな黒一色の舞台を今回の照明は、光と影の交差する空間を使って、奥行きのある舞台に見せていた。
以上が、素人の私が見た舞台の感想だが、役者さんについての1人1人のコメントは避けるが、それぞれの個性をうまく活かしているな~と感心するばかりで、この感想は「演出家は凄い」、の一言と重なる。
舞台上の役者さんたちが、伸び伸びとして見えたのは、あながち演技上手だけではあるまい、と思うほど、それぞれが自分の役どころを捉えての演技に感動した。
ーーーー追伸ーーーーー
本日(8月
27日)、知友のT君から嬉しいメールを頂いたので一部分をコピーして貼り付けておきます。(佐藤勝)
(略)
劇団の皆様は、お若い方が多く、苦労も多いこととは思いますが、
先の長さがうらやましく感じられました。
石川啄木終焉の地歌碑をグーグルマップで調べたら、石川啄木顕
彰室も隣にあることが分かりました。皆様のご尽力の賜が実物と
して残ることは尊いことです。皆様の生きた証ですね。
歌碑にある白鳥 の歌二首に込められた願いがわかり、生きたいと
いう心の叫びは同じでも、表現は人によって違うと感じました。
私もウォークやジョグをしながら出会う人や鳥、動物、風のそよぎ、
空の雲などに二度と無い一瞬一瞬を感じ、生きたいという願望の
強さを感じます。
今回は良い観劇の機会を頂きまして、生きる喜びに触れる機会と
なりましたことに心から感謝をしております。
また、機会があったら声をかけていただけるとありがたいです。
(略)