石川啄木と与謝野晶子・鉄幹夫妻の関係は広く知られている。
その鉄幹・晶子の全集40巻を先年編集発行したのは本年の7月で98才になられる逸見久美先生であるが,このたび全集に収めることの出来なかった文献から精選された小説・随筆などを収めた『与謝野鉄幹・晶子作品集』(紅書房)が刊行された。
編者である逸見先生とは啄木を介する団体で30年以上前から交誼を頂いている筆者は逸見先生の書に触れるたびに、その高潔な姿に敬服するばかりであるが先生は文学研究者として、また、歌人としても現役で今も活躍されている。
その姿を感嘆の思いを抱きながら只今、拝読しておりますが昨年末に発行された『わが研究回顧への思慕』(ながらみ書房)の時も「こんな凄い人がおられるのか」と云う思いであったが、今回も同じ思いである。
逸見先生の研究への出発は遅い出発であったとご自身が記されておられる。が、ご高齢の現在もなお、周囲の人々の協力を得つつ、常に研究者の第一線で出版活動をされていることは凄いことだ。
今回の書は昨日とどいたので拾い読みした程度だが諸所に収められた晶子の小文のコラム「私の処女出版」の中で『乱れ髪』について、「出さねばよかった」と後悔したと書いている。
これを見て私は30年ほど前に同じ鉄幹・晶子研究者である永岡健介氏から伺った「『乱れ髪』は初版から大変に売れた歌集で2,3年で10版以上の版を重ねているが、この版を全て集めて見たら、いずれの版でも歌を入れ替えたり作り変えたりしている」と話されたことを思い出した。
又、本書に晶子の「麗女小説集を世に薦めるに就いて」と題した「徳川時代唯一の女流小説家(荒木田麗子に就いて)」との文章がる。荒木田麗子という名を私はこれまで知らずに来たことを恥じた。
また、現在放映中のNHK朝ドラの主人公が「源氏物語」の作者紫式部で平安時代の文学もブームとなっているが私が最初に読んだ「源氏物語」は晶子の訳本であり、谷崎潤一郎訳は途中で投げ出し、後に瀬戸内寂聴の全巻を読んだ。
しかし「晶子源氏」を読んだ時のような感動はなかったことも含めて晶子が如何に古典に通じた人であったかをあらためて知り、胸の突かれる気持ちである。
また、全集発行の逸見先生を今日まで支え続けて来られた3人の編集者と逸見先生の2篇の「あとがき」を拝読、あらためて皆さまのご苦労に思いを馳せた。
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与謝野夫妻の作品集表紙
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あとがき=1
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あとがき=2
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晶子のコラム
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晶子の紹介した女流文学者荒木田麗子についての一部分
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本書の奥付