月刊の短歌総合誌「短歌往来」(2024年9月号)に勝又浩氏が連載している<歌・小説・日本語>(89)の「歌と時代の空気」を読んでいて驚いた。あろうことか有名な石川啄木の短歌が下記のように記されている。
「友がみな偉く見ゆる日よ花を買いきて一人慰む」
今回の主な内容は俵万智の歌について語ろうとしていたようだが、ついでに付け足した啄木の歌が上記のように一行の書き下してあり、歌の肝心の部分である2カ所も間違えて記している。これではこれまで読んでいた連載も信憑性も失せてしまう思いだが、念のために正しい歌を記して置きたい。
「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ/花を買ひ来て/妻としたしむ」
歌集『一握の砂』「我を愛する歌」より
但し「歌稿ノート」では一行の書き下しで「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花をかひ来て妻としたしむ」である。
中高生用の国語教本にも載っている歌なので引用するならネット検索くらいはして、確認して載せてほしいと思うのは私だけであろうか。「短歌往来」の編集者への信頼性も問われることなので、今後はさらに注目して読まれることを念頭に置いて頂きたいと思う。
なお、「短歌往来」9月号は特集「邂逅別離のうた」と云う好企画が組まれており、岡野弘彦氏の「百年を生きて」や逸見久美氏の「近づく百歳」などには深く感動した。また、現代歌壇の中堅歌人として活躍する佐藤よしみ氏の「口笛」は本号の中でもひときわ心に残る秀逸であったことも書き加えておきたい。
本号は各図書館で貸し出しが開始されております。気になる方は図書館を利用されてご覧になってください。(苦言者は湘南啄木文庫の主宰者 2024年10月5日 記)