「短歌」(KADOKAWA)2022年9月号に「ほっこりする歌」という特集で、井谷まさみち氏が啄木の「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ/花を買ひ来て/妻としたしむ」の歌を取り上げていた。
短い文章なので全文引用して置く。
「二十歳で結婚した啄木。代用教員や新聞社の校正係などとして働き、貧しい暮らしである。そんなある日、負の気持ちに句読点を打つように花を買って来て妻としたしむのである。息苦しい日常の中の一輪の花が詠む人の心にもほっと灯をともす一首。」
※この歌は人口に膾炙する歌なのでご存知の方も多いと思うが、本歌の解釈には各人各様な解釈がある。しかし、私は、此処に紹介した井谷氏ほど端的に今を生きる私たちの日常に取り込んだ解釈を見たことがない。素晴らしい解釈である。
ちなみにかつてネット歌人と呼ばれた桝野浩一氏は「友達が俺よりえらく見える日は/花を買ったり/妻といちゃいちゃ」などと現代語訳?しているが、こんなふざけ過ぎは別にして一流の研究者?の中でも首を傾げたくなる解釈をしてる人もいるが、それらはすべて歌の深読みから来た誤解と気付けないのだと思う。