山本玲子著『石川啄木 トレビアンなお話』(ツーワンライフ出版:1,000円+税/委細は下記の奥付写真参照)
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山本さんは元石川啄木記念館学芸員で現在、啄木ソムリエとしてフリーにて、石川啄木の文学と人との顕彰につながる活動は異色であり、研究者でありつつ、啄木の語り部でもある行動的な姿は神出鬼没のように、どこにでも現れる。
著作も異色で、今回の本は4つの章に分けられている。
本書の最大の魅力は「大きな文字、易しい解説、読者に寄り添う啄木」である。
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第1章は【トリビアの部屋】としてクイズ方式で啄木のさまざまなエピソードを伝えている。
第2章には【ストリーの部屋】として啄木の生涯に起きた出来事などを4つの短編小説として書かれているが、その内容には研究者ならではの視点が見られるから、読者は小説なのか評伝なのか、戸惑うかも知れない。しかしそれが本書の魅力になっている。
第3章は【エッセイの部屋】として、著者が日頃から感じていた啄木につながる旧渋民村の風景や、啄木が触れたであろう風物などについて著者の思いが綴られている。
第4章は【論考の部屋】と題されているように4篇の啄木論が収められているが、難しい論文では無い。ここにも著者の「啄木を伝える」という思いが込められているように思った。
例えば「花婿不在の結婚式」をテーマとした論考では、これまでに多くの研究者や小説家が自分の結婚式に出席せずに雲隠れしていた啄木を追求するものでは無く、仮説を立てて養護する見方もあることを示唆している点などは研究者の視点を超えて、啄木の語り部であるソムリエの姿も垣間見える。
が、このように思うのは読者の私が愛好者である所為なのかも知ない。しかし学問的な研究者も、この視点から「花婿不在の結婚式」を再考してみては如何か、と思う。
そして最初に紹介したように、大きな文字、易しい解説、読者に寄り添う啄木の姿は魅力的である、ということを強調して置きたい
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