このたび、韓国から嚴仁卿訳著『あこがれ』(日韓対訳)が完全翻訳版として発行されました。著者の嚴仁卿氏は2年前から『一握の砂』、『悲しき玩具』と完全版を刊行しておりますが、冷え切っている現在の日韓外交は双方国の政治家と外交官の稚拙さを露呈するものにほかならないが、百年前に日本の政治家伊藤博文によって韓国(当時の朝鮮国)が事実上日本の支配下に置かれるという悲劇の発端となった日韓併合の条約が発布された時に、若干23才の青年であった石川啄木は、他の誰よりも早く、朝鮮国の人たちの立場に立って詠んだ下記の1首の歌は有名でるある。
地図の上朝鮮国にくろぐろと墨をぬりつゝ秋風ぞ聴く
これは自分の国を失ってしまった国民(朝鮮)の立場に立った深い同情と哀しみの思いを込めた歌であるが、今日の日本の政治家や外交官たちは、果たして相手の国の立場に立って外交を進めているのであろうか。
また、韓国側の政治家たちも自分たちの政治は何所かで誤ってしまったのではないかと考えながら謙虚に外交に努めているのであろうか。居丈高な言葉を浴びせるだけが外交なのか?。そこが私には解からないが、人の心に寄り添う啄木の歌を彼らにも読む機会があれば、この難局も打開できるかも知れない。と願いながら嚴仁卿氏の3冊の啄木著書の刊行を喜びたい。