湘南啄木文庫ブログ

このブログは佐藤勝が個人的に収集した歌人・石川啄木に関する「よろず」情報を紹介いたします。また、私の雑多な日常的な話題や趣味の世界(落語や演劇鑑賞、読書体験)なども記してゆきますが、いずれの部門の同好の方々からのご協力なども頂くことが出来れば有難いです。なお、石川啄木に関する文献を主にした「湘南啄木文庫」のホームページ(http://www.ne.jp/asahi/shonan/takuboku/)の方も覗いて頂ければ嬉しいです。

「啄木」を求めて歩んだ60年!「北海道新聞」の記事に誘発されて」 (佐藤勝)

 

本日、北海道新聞(2020年8月13日・夕刊・記事)が石川啄木を通じて知り合った親友の1人である釧路市在住の北畠立朴氏から送られてきた。

その1面に啄木と釧路との関りが詳しく紹介された記事であり、取材に協力した北畠立朴氏の写真も載っている。北海道新聞には、つい先ごろ(6月6日~6月23日)も13回にわたって「私の中の歴史」で北畠氏を取り上げて「釧路の76日間を追う」と題して郷土の啄木研究の第一人者として紹介している。北畠氏の記事を読みながら、あの人にも自分と同じような人生があったことを再確認した。北畠氏との厚誼は40年の時間を裕に超えているのだが、あらたに知ることもあってこの連載記事は嬉しかった。

 私には全国各地に啄木を通じて知り合った友人が多くいる。また、居られた、と記すべき物故者となった友人、知人は数えるに枚挙も無いが、私が啄木に関する文献を集め始めて60年の月日が流れたと記せば納得頂けると思う。最初は雑誌に載った「啄木関係の文章」と思っていたのだが、いつの間にか雑誌から新聞に載ったエッセイや記事まで集めるようになった。

  文献収集の始まりは1冊の「啄木歌集」(角川文庫)を中学2年生(14才)の時に担任の先生から頂いたことが発端であった。

 それは何故はじまったかと言うと、当時の自分が置かれた理不尽な境遇と啄木の幾つもの歌が重なったのである。そしてその歌に慰めを受け、励ましを受けたことがはじまりであった。その慰めや励ましは私の心の中で愛着となり、他の啄木の文庫本も読みたい気持ちになり、次は単行本に、そして分野を問わずに雑誌や新聞に載った啄木に関する物なら何でも読み漁っていたのであるが、それらをすべて理解できたかと問うのは野暮なことだと言いたい。

  16、7才の少年にとって自分に寄り添ってくれる啄木の歌が、書簡が、日記が、親友であり、先生であったからなのである。これには生後6日目にして親から離れて育つことになった私の個人的な生育事情も絡まっているのかも知れない。

  そして、いつの間にか全国各地で開催される啄木展や啄木演劇の記事からチラシまで収集していた。地方(多くは岩手県)に出かけた時は啄木の名の付いたお土産まで気になって買い込んでいた。まるで吉田孤羊という最初の啄木研究者の足跡を踏襲しているようだが、彼と私の違いは大きい。吉田は啄木の遺作を世に出したい、という強い信念に基づいて全国各地に啄木を訪ね歩いていたが、私は自分の心を満たすために啄木に関する文献を収集していたのである(吉田孤羊は絵葉書は勿論、マッチのラベルまで収集していたことが後に盛岡市の「もりおか手紙館」に寄贈された遺品から解った)。

  しかし、年齢と共に私の心境にも変化が生じて、自分の持っている啄木に関する文献を同好の人々にも知らせてあげたなら、自分と同じように情報を受け取った人も啄木によって、慰めや癒しの思いを受けて、その人の人生も「新しき明日」に向かって行くのではないと思えたので「啄木文献所蔵目録」として1冊の小冊子(A5判・50頁)の私家版を発行(1982年6月)したことであった。

  この冊子が私と啄木をさらに深く結びつけて行くものとなることなど当時の私は想像もしないことであったが、これが私の人生を楽しいものにしてくれる始りでしたが、当時はネットなどの無い時代ですから図書館職員や大学の研究者でもない個人が集めるには限度がありましたが、往復ハガキを使っての文献探索はどれほど多く書きまくっていたことか、今もその頃の自分を愛おしくなるほど、利益につながらないことに夢中になれたのです。

  夢中になれるものがあったことを私は自分の人生の最大の宝であったと思います。その後に発行した『資料 石川啄木~啄木の歌と我が歌と~』(武蔵野書房)/『石川啄木文献書誌集大成』(武蔵野書房・1999年※本書により翌年度の岩手日報文学賞「啄木賞」と雄松堂の「ゲスナー賞」(銀賞)を受賞した)/『啄木の肖像』(武蔵野書房・2002年)/『続・石川啄木文献書誌集大成』(桜出版・2018年)などが私の主な単独書だが、『石川啄木事典』(おうふう・2001年)や昨年の夏に発行して好評を頂いている大室精一・平山陽の両氏との共著『クイズで楽しむ啄木101』(桜出版)などは共著に名を連ねているにも誇らしい思いに満たされる著作であり、私の歓びとなっている。

  2冊の正続の大著となった文献目録には3万2千点余の詳細な啄木文献を紹介してあるが、意外な人が啄木についての文章を残しておられることが、この2冊の「目録」によって知ること等も「目録」を楽しく開いて頂くことにつながるものと思う。

  最近、戦死した叔父の日記を物置にしていた部屋で探していたら、拙著の旧版(正版?)が10冊出版社から送られて来たままの姿で見つかった。中には手元に1冊しか無くて、アマゾンの古書で見つけて買って使用していた自著『啄木の肖像』も10冊、同じように出版社の包みのままで見つかった。思いがけない掘り出し物に出会えた時のように嬉しくなった。

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2002年3月刊行:武蔵野書房

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北海道新聞(記事2020年8月13日 夕刊の啄木関係記事 1面に掲載)

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1999年11月:武蔵野書房刊行

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2018年12月:桜出版刊行(予約者には湘南啄木文庫特製の正続2冊分のCDを付けた)

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1992年3月:武蔵野書房刊行

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私家版「石川啄木関係文献資料蔵書目録」の裏表紙面


月15日発行:私家版「石川啄木関係文献資料蔵書目録」