このたび、知友、伊井圭氏の遺作『啄木鳥探偵處』(創元推理小説賞を受賞)がアニメ化されて4月13日より放映中である。私が知っているだけでも「BSフジテレビ」をはじめ5局ほどの地上波テレビも含めた局での放映で、時間帯は月曜日の真夜中24時(BSフジテレビの場合)からの放映にもかかわらず若い人に人気があるようで、つい先日のこと、ある知人の青年から「啄木って探偵もやっていたの?」と聞かれて私もその場の雰囲気で「そのようだね」と笑いながら応えてしまった。
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一昨日の夜、私は三浦光子と堀合了輔の書いた2冊の本を取り出そうとしたが、五十音順に参列揃いで1万冊前後の啄木関係の本を保存しているのだが、整理方法と床面積の関係で三浦も堀合も奥の奥にあるために、その前列から前々列まで取り除くことがひと作業なのである。
作業の途中で次次と懐かしい写真や本が出て来て、ついぺらぺらと捲っていたら午後の4時頃から始めて2人の著者の本を取り出したのは夜の9時過ぎであった。
啄木関係の図書を私と同じように収集している若い友人の平山陽さんが興味を持ちそうな古い戯曲本があったので、途中で写真を撮って送った。
平山さんは今、映画や舞台劇になった啄木関係の文献を調べている。私が手にしたのは藤森成吉著『戯曲 若き日の啄木』(昭和14年・新潮社刊)と同じ本の再販本で、これは昭和21年に高須書房から発行されたものであった。
舞台に関しては先代の市川染五郎が啄木を演じた菊田一夫作、演出の「悲しき玩具」や佐々木愛・佐々木光枝母子が嫁と姑を演じた文化座「啄木の妻節子」、などの資料もあったなぁ、などと気が飛んでしまって時間が過ぎてしまうのだが、自分の書棚で書籍の検索をしながら感慨に浸ってしまうことが度々あるから作業がすすまないのである。
今回もこの作業の過程で井伊圭さんの『啄木鳥探偵處』の初版の単行本が出て来て、その本に挟まれていた伊井さん(本名は別)の手紙が出てきて、それを読んでいたら涙が出てしまった。
伊井さんは、あの本で創作推理小説賞を受賞したけど、次の作品の執筆依頼が届かない、これが私の実力なのでしょう、と苦しい思いを美しいペン字で綴っているのですが、その後に「啄木をもっと語りたいですね」とか、『啄木鳥探偵處』を書いた時のヒントは、井上ひさしの作品「泣き虫なまいき石川啄木」の舞台を、こまつ座で観たことであったと書いてありました。
アニメ化されて間もなくの情報では、アニメグッズまで出ていることを知ったが、もし、彼が今、生きていたなら、どれほど喜んだことかと思ったして涙したのです。
伊井さんの生きざまが、どこか啄木の人生に重なって来てしまったのです
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