湘南啄木文庫ブログ

このブログは佐藤勝が個人的に収集した歌人・石川啄木に関する「よろず」情報を紹介いたします。また、私の雑多な日常的な話題や趣味の世界(落語や演劇鑑賞、読書体験)なども記してゆきますが、いずれの部門の同好の方々からのご協力なども頂くことが出来れば有難いです。なお、石川啄木に関する文献を主にした「湘南啄木文庫」のホームページ(http://www.ne.jp/asahi/shonan/takuboku/)の方も覗いて頂ければ嬉しいです。

追悼 啄木研究者・田中礼先生のこと

帰宅したら机の上に、私の記憶にない田中ひな子さんという方から、謹呈 歌集『燈火』在中と表記された書籍が届いていた。
封を開いて驚いた!
国際啄木学会では長年にわたってお世話になっていた田中礼(ひろし)先生の歌集であり、帯文にある「病床でみずから手を入れつづけたニハ一首をお収める。」の文字を見た途端に私は、あっ!と思った。
慌てて「あとがき」をめくると、執筆者は田中ひな子とある。そして田中礼先生の生い立ちから、学究の道に進んで行く過程が記され、最終に「追記 礼は九月十三日に永眠」とあった。
田中先生とは、国際啄木学会で初めてお目にかかりましたが、啄木研究論は以前から拝読しており、元京都大学教授という職についておられることも存じあげていたので、私は初対面の時は、とても緊張していた。しかし先生は偉そうな素振りもなく、初めて会った私に「書誌の記録は大変でしょう」と気さくに声をかけてくださり、労いの言葉まで頂いた。
私はこの時の、先生の穏やかな話し方が、何故か懐かしい人に会ったような感じのしたことを30年近い年月を経た今も鮮やかに思い出される。
さらに、10年ほど前には新日本歌人協会が主催する「啄木祭」(会場は「東京・しごとセンター」であった)でのことだが、その年の特別講演者である田中先生は、壇上に上がってすぐに私の名前を出して「啄木にはいろいろな研究者がいる、その中で目立つことは無いが、とても大切なことを私たちに提供してくれている人が、湘南啄木文庫を主宰する佐藤勝さんは、そのような1人です。
啄木は、こういう人たちによって今日まで受け継がれて来た幸福な文学者なのです」
このように話された。田中先生は、私が会場にいることを知らずに話していたのですから、私はなおさらに、先生の人がらに感動してしまって、講演後に挨拶をすべきか、このまま帰るか、ほんの一瞬だが逡巡して、講演後に先生の姿を探してお礼を申し上げたら「あ、いらしてたのですか」下手な話しに入れてしまったけど、本当に感謝してますよ」と私が年に一度発行していた「湘南啄木文庫収集目録」について恐縮するほどの言葉を頂いた。
先生の啄木図書は私の書棚にも揃っているが「新日本歌人」の誌上で拝読する歌からも歌集は当然出ていると思っていたが、歌集としての発行は本歌集が処女歌集であり、それが遺歌集となってしまったことも、田中先生の人がらと重なってしまう。
ここに載せた写真の歌も、私の見た先生の人がらと重なる歌です!。
私は昨夜、遅くまで歌集を拝読して、この文を投稿しましたが、一日経って読み返したら、あまりの誤字脱字の多さに驚いて、少し訂正しました。ここに謹んで田中礼先生のご冥福を祈ります(合掌)

 

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田中礼先生の遺歌集『燈火』

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田中礼先生の遺歌集『燈火』-1

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田中礼先生の遺歌集『燈火』-2