毎日新聞(東京:朝刊)2018年9月18日
蔵書拝見
市田忠義氏/上 「新編 啄木歌集」 叙情性・革新性に共感
中学の授業を機に石川啄木にひかれた。当時は本を買う余裕がなく図書館に通い詰めていた。歌集「一握の砂」「悲しき玩具」を借り、合計745首をほとんど暗唱できるぐらい何度も読み返した。今でも50首ぐらいは問題ない。
啄木は平易でわかりやすい。当時は甘酸っぱいロマンチシズムに浸っていたからぴったりだった。中学・高校は野球一筋だったが、「やはらかに 積れる雪に 熱てる頬を 埋むるごとき 恋してみたし」とか思い浮かべながらじゃ強くなるわけがない(笑い)。
恋に恋していた当時、言葉も交わさず告白もしないまま就職し、それを失恋だと思っていた。仕事後に街を歩…