湘南啄木文庫ブログ

このブログは佐藤勝が個人的に収集した歌人・石川啄木に関する「よろず」情報を紹介いたします。また、私の雑多な日常的な話題や趣味の世界(落語や演劇鑑賞、読書体験)なども記してゆきますが、いずれの部門の同好の方々からのご協力なども頂くことが出来れば有難いです。なお、石川啄木に関する文献を主にした「湘南啄木文庫」のホームページ(http://www.ne.jp/asahi/shonan/takuboku/)の方も覗いて頂ければ嬉しいです。

石川啄木の借金と貧乏に関する文献リスト (佐藤勝)

以前に知人から「啄木が朝日新聞(正しくは「東京朝日新聞社」)に勤めていた時の給料はいくらだったのか」と問われたことがあった。なぜ啄木の給料が知りたいのか?と私から質問したら、「彼は今でも借金を踏み倒したとか借金の名人だったと言われているから気になっていた」というので、これを機会に2冊の拙著『石川啄木文献書誌集大成』(武蔵野書房:1,999年発行)と『続・石川啄木文献書誌集大成』(桜出版:2018年発行)に収めた約3万2千余点の「啄木文献」の中から「啄木の借金と貧乏生活」に関する文献はどれほどあるのかを調べてみたら、その表題に記されたものだけでも、かなりの数があるのに驚いた。

特に啄木の「借金メモ」や「金銭出納帳(記入したのは妻の節子)」が見つかり、新聞や雑誌の記事になった時期以降の多くの文献に見られることは面白い。

啄木の妻、節子が何故、啄木の最晩年(死の直後まで)「金銭出納帳」なるノートを作成したかについては詳しく知られている。

しかし、啄木が何故「借金メモ」を残したのか、その作成動機などについては謎である。が、多くの研究者は「返す気持ちがあったから」と好意的に見る人が多いのに対して、啄木を研究せずに新聞や雑誌の記事から「良いとこ取り」をした人の文章には読者に媚びて気を衒う処が見えで大袈裟な物言いをしており、その媚びた文章でいかにも自分が新発見のような書き方をしている文章もあって面白い。

(※注)

下に掲載した文献リストは2019年(令和元年)3且までに発行され啄木文献の中から選んだものであり、それ以降のものは対象としてない。

啄木と借金メモの文献目録=1=

啄木と借金メモの文献目録=2=

啄木と借金メモの文献目録=3=

 

北海道新聞(2023/01/29)が2頁にわたり明治期の啄木を紹介!

北海道新聞記者の黒川伸一氏(文)と小川正成氏(写真)による明治41年1月に釧路の駅に降り立った啄木が見た当時の風景と啄木の心境を2面にわたる特集記事として伝えている。

この新聞は北海道在住の友人から送って頂いたものであるが、それを写真にて紹介する。

一昨日(2月2日)の釧路は零下15度であったと友人の手紙には書き添えてある。

明治期の釧路の真冬は今の私たちの想像を超える寒さであったことは確かであろう。

啄木はそのような環境の中で何を得て、何を残して釧路を去ってきたのか。

黒川記者の文節からは、それらを示唆する言葉も読み取れる。

個人的な話だが黒川記者には私も2回ほどお目にかかったことのある。北海道に於ける啄木の姿を折に触れて紹介されてきた記者であり、その誠実な人がらも記憶している。今回の記事を拝見して黒川記者の啄木探究とその温く、啄木の人間性を見つめる記事に深く感動した。

小川正成氏が担当された写真にも今なほ真冬の釧路の厳しさを伝えるためのご苦労が垣間見られて、思わず写真に見入ってしまったことも記して置きたい。 (2023年2月4日 湘南啄木文庫 主宰 佐藤 勝)

北海道新聞2023年1月29日(日曜版1面)

北海道新聞2023年1月29日(日曜版2面)

 

北嶋藤郷著『日本におけるドナルド・キーン書誌 ドナルド・キーンをめぐる人びと』を読む!

日本文学研究者のアメリカ人、ドナルド・キーンの名は石川啄木と並んで、たびたび紹介されることがある。

それはドナルド・キーン氏が啄木(特に「啄木日記」)に深い関心を示し続けたからであるが、93歳で亡くなる直前に氏は『石川啄木』(新潮社)という長編の評伝を書いたからであり、この文章は雑誌「新潮」(2016年2月号)に掲載されたものを刊行したのであるが、雑誌掲載の直後に国際啄木学会会員のY氏が、その評伝には50箇所を超える誤りのあることを雑誌の編集部宛てに送っていたことも私はY氏から直接伺った。が、残念ながら訂正された箇所は僅かであったと云う。

しかし、M氏は英語圏に於いて石川啄木の評伝が初めて刊行されたことに大きな意義があると語ったことも含めて同書のことをAmazonのカスタマレビューに「湘南の啄木」がその経緯を詳細に紹介している。

また、単行本が発行された翌年の国際啄木学会発行「研究年報」に前述のY氏が書評を書いている。

新潮社の単行本発行間もなくして英語版がニューヨークから発行された。現在、新潮文庫にも入っている。

 

さて、そのドナルド・キーン氏の日本における書誌を調べて一冊の豪華本にまとめた人がいる。

私はその本を約2年の月日をかけて本日、ようやく読了した。北嶋藤郷著『日本における ドナルド・キーン書誌 ードナルド
・キーンをめぐる人々ー』(レッドペアプレス/A5判/全236頁/2021年2月)

表題と目次を見てわかるように本書はドナルド・キーン氏に関する文献を徹頭徹尾蒐集し、その書誌の紹介に止まらず、簡潔明瞭な短文にて文献の内容も紹介し、文献によっては全文を縮小版にして載せてもいる。
また、例えばドナルド・キーン三島由紀夫と出会う機会となった経緯や其の後の二人の交流まで述べながら、発表された文献の詳細な書誌を記すというものに、私はドナルド・キーンの書誌というよりも評伝のような感覚で細かい文字を2年間追い続けた。

私自身が2冊の『石川啄木文献書誌集大成』(正・続)を編み、2冊合わせて三万二千余点の文献を紹介したことを思いながら、本書は私の書誌とは異なることは承知しながらも、その魅力にハマってしまったことも事実だった。

北嶋氏にこの大著を成させたものは何か?、という好奇心もあるが、この仕事の途中で折れなかった著者の強靭な精神力にも敬服するばかりであり、敬服は感動となって読了した。

顧みるに本書を開きながら幾たび文献にあげられた書籍などを自分の書棚にもあったのでは?と思い、今度は見つけた本を読んでしまい、本書は途中になる。
そのように楽しませてくれることが嬉しくて2年を超える月日を共有してきたものなので、この嬉しさを綴りたくなったものだが久しぶりに、嬉しい読後感を味わっている。

次は大室精一編著『啄木と節子  まるわかり年譜』(桜出版)と太田登著『啄木  我を愛する歌ー発想と表現ー』(八木書店)の2冊で楽しませて頂くことになっている。

ドナルド・キーン書誌...』の表紙

ドナルド・キーン書誌』の目次(1)

ドナルド・キーン書誌』の目次(2)

 

2022年に刊行された真の啄木研究書は以下の4点!

 

本年の啄木研究書は管見ながら4点の図書であった。いずれの図書からも長年、真摯に啄木研究に向かい合って来られた姿と重なるもので胸を打つ渾身の作であることが嬉しく感じられる。

研究書にとって何よりも大切なことは「奇を衒うことのないこと」であるが、4人の編著作者の日頃から伺われる研究者としての姿勢が大著を成したことに重なって嬉しい成果であったと思う。

 

既に藤澤全(『異邦と石川啄木』)や倉橋健一(『歌について~啄木と茂吉をめぐるノート』)両氏の作品についてはこのブログに於いても紹介してあるが、12月になって大室精一、太田登、という啄木研究の第一人者である両氏の編著書が偶然にも同じ日付(この日付は啄木の処女歌集『一握の砂』の刊行と同じ)にて刊行されたことも意義深い。

 

★大室精一編著『啄木と節子 まるわかり年譜』(内容の詳細は下記に掲載の目次や帯文などにて確認を)は、先年の大著『『一握の砂』『悲しき玩具』~編集による表現~』(おうふう)によって啄木の2冊の歌集における多くの編集の謎が初めて解明されたことでも名著であるが、このたびの編著は啄木の存在をあらゆる面から複合的に、しかも「難しい学術書」では無く、啄木という名を知る誰もが手にしてみたくなるように工夫されたことには感動を越えて感服するばかりの書だ。

本書は今後の啄木研究者にとっても、また、愛好者にとっても座右の書として長く親しまれるものと思う。また、その価値を備えた書であると確信する。

 

★太田登著『啄木 我を愛する歌~発想と表現~』(本書の内容と詳細も下記に掲載の目次などにて確認を)は、啄木短歌研究に於ける長年の成果を凝縮してまとめられたものであると思うが、著者には既刊『啄木短歌論考~抒情の軌跡~』(八木書店)という名著がある。

今回の書はその後の研究成果の集大成であることはいうまでもないが、本書の表紙カバーの裏面に印字された【『一握の砂』の鑑賞・評釈を新たな視座で再検討】の文字からも解るように『一握の砂』の中の「我を愛する歌」151首を「徹頭徹尾」掘り下げ、深めた解釈には著者ならではの鑑賞と解釈があって読者の私には感動以外の言葉が見つからない。

 

★特記として紹介したいのは月刊誌「短歌」に村松正直氏が連載中の「啄木ごっこ」である。

この連載は毎号4P~5Pの掲載で既に2022年12月号にて連載50回に達する長編であるが、まだ、当分は連載される予定のようだ。

まさに「足で書く啄木評伝」である。内容にも執筆者の誠実な人柄が滲み出ており、好感が持てるので、毎号楽しみに読ませて頂いている。

 

※ 管見の言を繰り返すが、ほかにも研究書とは言えないが複数の戯れ書的なものはあったが、それらの著作者には失礼ながら此処にて紹介するに値する文献として私の胸に響くものではないと判断して割愛した。 

(2022年12月30日 湘南啄木文庫主宰記す)

大室精一編著『啄木と節子まるわかり年譜』表紙

大室精一編著『啄木と節子まるわかり年譜』の帯文

大室精一編著『啄木と節子まるわかり年譜』の目次

大室精一編著『啄木と節子まるわかり年譜』の中扉絵

大室精一編著『啄木と節子まるわかり年譜』の奥付

太田登著『啄木 我を愛する歌~発想と表現~』表紙

太田登著『啄木 我を愛する歌~発想と表現~』目次=1=

太田登著『啄木 我を愛する歌~発想と表現~』目次=2=

太田登著『啄木 我を愛する歌~発想と表現~』奥付

松村正直「啄木ごっこ」=第50回=の一部分(「短歌」2022年12月号より)

藤澤全著『異邦と石川啄木』表紙

倉橋健一著『歌について~啄木と茂吉をめぐるノート~』表紙

 

啄木愛好者の誰もが待ち望んでいた本がついに刊行!

大室精一編著『啄木と節子 まるわかり年譜』(大型本・A5判・360頁・桜出版 2022年12月1日発行・2000円+税)
本書の帯文には
「毎日が啄木記念日」というキャッチコピーが超大文字で書かれている!
先ず、この発想の凄いことがこれで解るように啄木の日記や書簡、そして節子の手紙などを駆使して1日分を3行の記述を基本として365日の項目の中に2人の身辺に起きた事柄が簡潔明瞭に記載されている!

これは前代未聞の調査であり、一覧表のように啄木と節子の出来事を記してあるから凄い!

又、その年の干支や曜日まで解る仕組みになっており、愛好者が喜ばない筈は無いが、本当に喜ぶのは愛好者ではなくて研究者であろうと私は思う。
なぜなら第三章の「啄木ワンポイント年譜」には
★啄木の旅の一覧表
★啄木と橘智恵子の往復書簡の一覧表
★石川家と堀合家の関係者の生没年月日一覧表
★啄木映画・舞台・ドラマなどの一覧表
★宮崎郁雨の年譜一覧表
★全国啄木碑の一覧表

この本が手元に置いてたなら誰でも啄木研究者になれる書だという一覧表が付いている。これは編者の大室氏に協力した啄木愛好家や研究者が各自の専門分野の研究の成果を一覧表としてまとめたもので、これは著者の熱意によって集まった人々の渾身の「一覧表」であり、大室氏のプロデュースの手腕が此処にも生かされている。

よって前述のように本書は今後の啄木研究者に、そして愛好者にも「座右の書」となること間違いる無しの書になるものと思う。

※   本書はAmazonなどネットでの購入も可能だが桜出版に直接申し込むこともできる。

大室精一編著『啄木と節子まるわかり年譜』(桜出版:2022年12月発行)

『啄木と節子のまるわかり年譜』(中扉)

『啄木と節子 まるわかり年譜』の奥付




「与謝野晶子と童話」についての講演と研究会・「Zoom」で公開講座!

啄木を育んだ雑誌「明星」研究会が講演と研究発表を「Zoom」にて公開講座を開催(受講は無料・先着100名)

内容と申し込み方法は下記の写真版を参考にしてください。

申し込み後に折り返し決定した方には上のようなメールが届きます。

申込み方法は写真版の案内のようにグーグルマップにて「明星研究会」と打ち込み、下に表示された「明星研究会」をクリックして申込みください。

 

青春の短歌大会(さかい利晶の杜)を開催!

啄木があこがれた与謝野晶子を顕彰する「さかい利晶の杜」では下記のように「青春の短歌大会」が開催されます。大会にむけて短歌の募集もしておりますので、興味のある方は写真版のチラシ記載内容をご覧になって参加されることをおすすめいたします(湘南啄木文庫 主宰 佐藤 勝)

大会のチラシA面

大会のチラシB面